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妙義山(Mount Myougi)

キービジュアル
フィールド 妙義山
ルート 妙義神社〜大の字コース
アクセス 〒379-0203 群馬県富岡市妙義町岳322-7 [MAP]
難易度 ★★★★★
標高 1104m(相馬岳)
往復時間 約2時間
登山日 2014/7/12 |
妙義山とは 群馬県、甘楽郡に位置する日本三大奇勝の一つとされる山。
通称「アスレチック山」と呼ばれるほど、岩場、鎖場だらけのアクティブな山。
妙義山という名の山はなく、大きくわけて「白雲山」と「金洞山」に分かれ
それぞれ目指す山頂は異なる。
谷川岳に次ぎ、滑落・遭難事故が多いが、
報道では「妙義山で滑落事故」とは報道されずに、
「白雲岳や、金洞山、相馬岳での事故」と総称の妙義山とは呼ばれないため
実際、谷川岳よりも死亡事故は多いように思える。
ここが良い! 低い標高だが、危険個所が多く、それぞれのポイントからの見晴しは絶景。
何より、一度の登山で、「通過したポイントを制覇した」という
達成感を味わえるのはこの山ぐらいだろう。
大げさではなく、一度のミスで普通にあの世行きの難所が多数あるので
もはやロッククライミングのレベルに近い。
おまけに数々のクマさん目撃情報が寄せられるスリル付。
体験記 群馬県、甘楽郡に位置する妙義山に行ってきた。
今回は山頂は目指さず、「アスレチック山」の異名に軽く触れる程度の意気込み。
標高1000m弱程度の山ならスキップしながらでも余裕で制覇できる感があるが
これがとんでもない山であることが調べれば調べる程明らかになっていく。

今回は、妙義山登山マップに記されている上級登山道を選択したが
こちらの「大の字」と呼ばれるポイントで、山飯を食って帰ろうという
軽いジャブのような計画で登山を開始。
※分かりずらいが、写真の「大」と書いてある白い所を目指した。(大の字)

登山道は妙義神社を経由し、その後現れる緑に囲まれた登山口から始まる。
序盤から細い砂利道が続き、ひたすら歩く事1時間。
途中ちょっとした傾斜にあるトラロープの補助と、軽い鎖場を乗り越え
あっという間にマップにある「大の字」が見えてきた。
地上から見える大の字は、全体の約3分の一ぐらいの位置だ。
さすが1000m弱の山、おおよそ1時間程度でここまで来ることができる。
大の字手前につくとちょっと開けたエリアになり、休憩するにはもってこいの場所に出る。

さて、いよいよ今日の目的地でもある大の字を目前に、鎖場の様子を確かめる。
噂には聞いていたが、改めてみると面白い。
約5〜6m弱の岩場を鎖一本で登らなければ大の字に触れる事はできない。
この程度の傾斜と高さでは、私はそれほどきつくはなかったというのが正直なところ。
しかし、メンバーに女性や子供がいるのならば話は別だ。
途中で鎖から手を離せば確実に骨折するような高さもあり
うっかり打ち所が悪ければここでお陀仏になる可能性もある。

何とか力を合わせて皆で「大の字」にたどり着く事ができたが
序盤から1時間程度のこのポイントですら、
一度の失敗で松葉杖レベルのダメージが待っている。
なんという山だ。

この日は日差しが強く、非常に暑かった。
大の字を登り切った所で、昼食をとろうと思ったが、
暑すぎてとてもそんな気にはなれず、
今登った鎖場を下り、日陰で昼食をとることに。
愉しみにしていたソーセージとカップラーメンをいただく。

その後、たっぷり時間をかけ下山を始めるが
ここで噂に聞いていた「ある生物」の攻撃をうけることになる。

ただでさえ日陰では蚊に食われる事が多かったので
皮膚のかゆみ・痛みはあまり気にはしていなかった。
そんな中、立ち休憩中、突然右ふくらはぎに違和感が走る。
ヌメっとしたような、ちょっとヒヤっとするような
全身に粘液を纏った生き物が、確実にふくらはぎに張り付いているのがわかった。

「ん?ナメクジか?」と右手でパシっとナメクジ的なものを払った。
払った。。?払ったはず。もう一度パシっとふくらはぎら辺を払う。
ん?払えない!!なんだなんだと、「それ」をひきちぎるように手に持った途端
血の気が引いた。

ボディを高速で左右に揺らすその動きは、ナメクジにしては機敏すぎる。
気色の悪いその物体は私の手のひらの上で踊っていた。
ヒルである。

日頃なかなかお目にかかれない生き物だけに関心はあったが
なかなか自分が被害に合うとじっくり観察もできないもので
すぐさま踊り狂うヒルをブン投げ呼吸を整えた。
幸いポイズンリムーバーを持っていたので、※ヒルジンの注入は浅かったが
なんともおぞましい経験である。
妙義山での山ビル被害は結構多いので日陰での休憩は気を付けた方がいい。
(※ヒルにかまれた際にヒルより流し込まれる血液の凝固を抑える血が止まらなくなる成分)

山ビルの話で盛り上がりながら山を下っていると
途中清水を発見し、下山休憩がてら清水を沸かしコーヒーを飲み一服。
この時、持ってきた2.5Lの水も全て飲み干してしまっていたため
このような天然の水場というのは非常にありがたい。

コーヒーを飲み終え、流れる水で足を冷やし再出発。
この足を冷やすという行為のおかげか、その後の下山が非常に楽になった。
あっという間に下山し、ふもとの休憩所でアイスクリームを食べて帰路につく。

妙義山。 通常、山の鎖場など、軽いサポート程度に使われる補助的設備であるものだが
この妙義山の鎖場にある鎖は「命をつなぐ鎖」。
己の両腕とそれをつなぐ鎖に命を預ける感覚が妙に恐ろしく愉しい。
全てのコースを制覇したものからすれば「大の字ぐらいで」と思うかもしれないが
あの程度の大の字すら拝めず、引き返す人も少なくない。

結論からいうと、この山は「腕力」・「握力」・「体力」・「運」
これらを全て兼ね備えていないと登頂は難しいだろう。
通常登山での持久力もそうだが、筋力と体重のバランスが要求されるため
一緒に登るパーティのレベルを前もって打ち合わせておかないと
誰かを助けるために誰かが犠牲になる。なんて事になってしまう危険性が多いにありえる山だ。 あの先には、更に過酷で危険なポイントがあることを知っているだけに
その達成感は半端でないことが予想できる。
いつか必ず、全てのコースを制覇しようと思う。

国産の「ファイト一発山」は最も危険かつ、最も魅了される山であった。

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